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結核について

  • 2023-05-08
  • 定期接種
  • 生ワクチン
  • 小児

結核とは

 結核は、結核菌という細菌が起こす感染症です。肺結核がもっとも有名ですが、骨や腸管などの全身にも感染を起こします。結核菌は抗酸菌と呼ばれる特殊なタイプで、そのために結核もほかの細菌感染症と異なる特徴を多くもっています。
 結核は、マラリア、HIVと並ぶ世界三大感染症の一つで、世界保健機関(WHO)のデータでは、単独の病原体による死亡で最も多いのが結核です。日本は中まん延国で、新たに結核と報告される人は人口10万人あたり年間10人以上と、先進国としては罹患率が比較的高い国です1,2)。特に一部の大都市の結核罹患率は依然として高く、集団感染事例も後を絶ちません。
 結核菌は主に空気感染で伝染しますが、結核菌を吸引したひとのうち発症するのは5%程度とされます。発症しても曖昧な症状が続くことが多い特徴があります。結核菌を吸引しても全員がすぐに発症するわけではなく、何年もたってから発症する人もいます。結核菌を吸い込まないためにはN95マスクや特殊な空調設備が必要になります。

感染経路主に空気感染・飛沫感染
潜伏期6 か月以内-数十年後など幅あり
周囲へ感染させうる期間
喀痰の塗抹検査等で陽性の間は感染力があります。
通常は連続して3回陰性であれば感染力はないとされます。
学校保健安全法第ニ種(出席停止期間:医師において感染のおそれがないと認められるまで)
感染症法2類感染症(全数報告:直ちに届出が必要)

  • https://www.vaccine4all.jp/pics/news/news-169-1.png
    図1結核の感染と発病(参考文献4を引用改変)

主な症状は

 肺結核の主症状は咳、血痰、発熱、体重減少などですが、多くの場合、感染初期にこうした症状ははっきりしなかったり、または揃いません。最初の病巣は肺ですが、血液を通じてリンパ節、骨、関節、腎臓、腸、髄膜(脳を包んでいる膜)などに広がります。全身に結核菌が広がる粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)という状態もあります。

診断方法は

 患者さんから採取した検体(痰や組織など)中に結核菌を見つけることが最も確実です。見つけた菌を培養して、治療に使える抗菌薬も調べることができます。結核菌の破片をPCRという遺伝子検査で探す場合もありますが、この場合は培養ができません。胸部X線写真などの画像検査は、結核の発病を診断する場合や、結核患者が発生した際の接触者健診などで実施されますが、画像検査だけで確実な診断はできません。

治療法は

 治療法は肺結核の標準治療では2-4種類の抗結核薬を6ないし9か月間、服用します。
結核に感染しているけれどまだ発症していない人(潜在性結核感染症)で、将来的に結核を発症するリスクが高い場合は、1-2種類の抗結核薬を4-9か月間、服薬します。

予防法は

 乳児の結核性髄膜炎(ずいまくえん)の発症や重症化予防にBCG ワクチンが有効です。乳児が結核にかかると致命的になる場合が多いため、日本では乳児を対象に定期接種が行われています。

BCGワクチンについてはこちらを参照。

参考文献・サイト

 
 
 
4)医療者のための結核の知識、第5版、四元秀毅編、医学書院、2019

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