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ワクチンと病気について

病気(VPD)について

ポリオ(急性外白髄炎・小児まひ)について

  • 2023-05-07
  • 定期接種
  • 不活化ワクチン
  • 小児
  • 渡航者

ポリオ(急性外白髄炎・小児まひ)とは

 ポリオウイルスの感染によってヒトのみに生じる感染症です。症状が出た場合は麻痺などの中枢神経症状が中心のため、小児麻痺(しょうにまひ)、急性灰白髄炎(きゅうせいかいはくずいえん)などとも言われます。
 日本では1940年代頃から全国各地で流行し、麻痺の後遺症を残した方が多くおられましたが、1961年よりポリオワクチンを国内で使用するようになってから次第に減少し、1980年を最後に国内での患者の発生はありません1)。しかし海外では、南西アジア、アフリカ諸国などで今なお流行が持続しており、そこへの渡航時や、そこから感染者が日本へ入国した際は、私たちも免疫をつけておかないと感染する可能性があります。
 また、ポリオウイルスの感染がわが国で生じなくなってからもワクチン株によるポリオ様の麻痺(VAPP:Vaccine-associated paralytic poliio)は、数年前までは440万回あたり1人の確率で生じていました1)。しかし、ワクチン株によるポリオ様の麻痺(VAPP)は、2012年に不活化ワクチンに変更してからは生じなくなりました。

感染経路接触感染、経口(糞口)感染
潜伏期7-21日
周囲に感染させうる期間3-6週間
感染力(R0)※15-7
学校保健安全法第一種感染症(急性期の症状が治癒又は固定するまで出席停止)
感染症法2類感染症(全数報告:直ちに届出)
※1 R0:基本再生産数:集団にいる全ての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、一人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表します。つまり、数が多い方が感染力が強いということになります。

主な症状は

 感染者の大半(90-95%)は症状はなく、あっても自然に治癒します。しかし約5%で、発熱、頭痛、咽頭痛、悪心、嘔吐、倦怠感、便秘などの症状をみとめます1)。感染者のうち1〜2%は上記の症状に引き続き無菌性髄膜炎を起こします。また、0.1-2%は麻痺をきたしますが、麻痺をきたした場合も、後遺症を残すのはその中の一部です。死亡率は、小児は2-5%、成人は15-30%です1)

診断方法は

 最も重要な診断は、糞便からのウイルス分離です。麻痺が出現して早期に糞便や咽頭分泌液などを採取します。ポリオウイルスが検出された場合は、ウイルスの株を鑑別する必要があります。血液検査でも診断は出来ますが、ワクチン接種によって免疫を持っている人が多く、あくまで補助的手段です。

治療法は

 ポリオウイルスに対する薬はなく、症状に応じた対症療法しかありません。

予防法は

 ポリオ成分を含んだワクチン接種により予防を行います。ポリオ感染がまだ存在する国へ旅行する場合は、その前にワクチンの追加接種を受けることが勧められています。
 日本では1963年から経口ポリオワクチン(2回)が乳児期に接種されるようになりました。しかしワクチン株によるポリオ様の麻痺(VAPP)が生じるため安全性に問題があることから、わが国では2012年9月以降は不活化ポリオワクチン(4回)、2012年11月以降は四種混合(DPT-IPV)ワクチン(4回)が定期接種として乳児期に接種されるようになりました。
 不活化ワクチンは効果が弱いためにより多くの接種回数を必要とします。いずれも接種回数が不足している場合はポリオに感染する可能性があるため、母子手帳で確認し、不足している場合は医療機関に相談してをワクチン接種を受けるようにしましょう。
 一方、ポリオワクチンによる免疫効果は、ポリオ含有ワクチンの4回目の追加接種後、4年で抗体価が防御レベルを下回る可能性が示唆されており、厚生労働省で5回目の追加接種の導入とその実施時期等に関して検討が行われています4)。4−6歳の時期にポリオ含有ワクチンの追加接種を行うと十分に抗体価が上昇することが知られており、世界の多くの国ではこの就学前の時期に2期としてポリオワクチンの追加接種が行われています。今後、日本でも就学前などにポリオ含有ワクチンの追加接種が制度として整備されることが望まれます。
 
四種混合(DPT-IPV)ワクチンについてはこちらを参照。

参考文献・サイト

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