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百日咳について

  • 2023-05-05
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百日咳とは

 百日咳は咳を主とした急性気道感染症で、百日咳菌という特殊な細菌が原因です。終生免疫(一度感染したら次はかからない)の感染症ではないため、風邪のように何度でも百日咳にかかる可能性があり、特に6か月未満の乳児が百日咳にかかると呼吸器不全など命に関わることがあります。
 日本では2017年12月まで特定の小児医療機関からの症例報告のみでしたが、三種混合・四種混合ワクチン接種歴のある小児・成人の間でも流行が散発的にみられていることが問題となっていたため、2018年1月からは百日咳と診断された症例は全例報告することとなりました。実際に百日咳感染者で最も多いのは5-15歳の小児で、そのうちの約8割が4回の百日咳含有ワクチンを接種していること、感染者の2つのピークは30-50代の成人にあることがわかりました2)
 小児期の予防接種以外に、乳児のいる家族(または出産予定の家族)は百日咳含有ワクチンの追加接種で免疫をつけることをお勧めします。

感染経路飛沫感染・接触感染
潜伏期5-10日(最大3週間)
周囲に感染させうる期間咳嗽開始約1週間前-3週間後
感染力(R0)※116-21
学校保健安全法第二種(出席停止期間:特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌薬による治療が終了するまで)
感染症法5類感染症(全数報告(2018年1月〜):7日以内に届出)
※1 R0:基本再生産数:集団にいる全ての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、一人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表します。つまり、数が多い方が感染力が強いということになります。

主な症状は

 百日咳はその名のとおり咳などの症状が長引くのが特徴です。
 典型的には5-10日程度の潜伏期の後、軽いかぜ症状が徐々に強くなるカタル期(約2-3週間)があり、この時期がもっとも感染力が強いです。次に痙咳期(けいがいき)(約2-3週間)には、立て続けに激しく咳き込み、最後にひゅーっと息を吸い込むような咳発作を伴います。なかにはひどい咳のために顔が真っ赤になったり嘔吐(おうと)を伴い無呼吸発作をひきおこすことがあります。その後、徐々に回復していきますが、数か月にわたって症状が長引くことがあります。
 しかし、成人や百日咳含有ワクチンを接種した人が百日咳にかかった場合、症状が典型的ではなく、軽い咳が長引くだけで自然に治癒するため、ウイルス性の風邪と見分けるのが難しいです。
 成人が百日咳にかかっても重症化することはありませんが、1歳未満の乳児、特に3-6か月未満の乳児や新生児が百日咳にかかると、呼吸器不全に陥り呼吸停止など命に関わることがあり、大変危険です。また、百日咳は感染力がとても強く(麻しんと同程度)、百日咳にかかった患者がワクチン未接種の同居家族に感染させる可能性は80-90%と高いです。

診断方法は

 これまでは百日咳菌凝集素価のペア血清や抗PT抗体、抗FHA抗体などが用いられていましたが、2016年11月に診断精度の高い遺伝子検査(LAMP法)ができるようになりました。その他、精度の高いPCR法は特殊な機関でしか測定できませんが、LAMP法は診療所でも数日で結果が判明するため、今後の診断率向上に貢献することが期待されます。

治療法は

 マクロライド系の抗菌薬で治療します。アジスロマイシンやエリスロマイシンをカタル期に投与すると、菌の排出が減り感染性を減らせます。

予防法は

 乳児のいる家族やこれから出産を希望している家族(両親、兄弟、同居の祖父母なども)はとくに、自身が感染しないよう、また乳児に感染させないよう、予防接種を含めた感染予防対策が大切です。
 日本では乳幼児期にDPTまたはDPT-IPVワクチンを接種しますが、4-12年で免疫力は低下するため3)、小・中学生を含めた学童や成人はワクチンによる追加接種で免疫をつけることが望ましいです。
 日本でも三種混合ワクチン(トリビック®)が11-12歳及び成人に接種が可能です(任意接種)。今後、学童期に対して百日咳含有ワクチンの定期接種が追加されることも検討されています。
 
詳細は
DPT-IPV(四種混合ワクチン)についてはこちら
Tdap(成人用三種混合ワクチン)についてはこちら
DPT(三種混合ワクチン)についてはこちらを参照。

参考文献・サイト

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