ワクチンのお話
アナフィラキシー について
- 2021-09-29
アナフィラキシーとは?
急速に起こる全身の強いアレルギー反応
アレルギー反応があっても全員がアナフィラキシーを起こさないように、アナフィラキシーが必ずアナフィラキシーショックまで進むとは限りませんが、アレルギーとアナフィラキシーの境界は曖昧で初期は気づきにくいので、まさか?と思った時点で対処を急ぐ必要があります。
ここではアナフィラキシーについて書いていますが、基本的に非常にまれなできごとです。例えば一般のワクチン接種では100万回に1回程度、医薬品では(薬剤にもよりますが)ずっと多く、1000〜1万回に1回前後です。
アナフィラキシーはなぜ起きる?
微量の異物が引き金:飲食・注射・粘膜
アレルギー反応は、何らかの異物が人体に入り込んで起こります。食べる、刺される、注射する、が代表的ですが、花粉症が鼻の粘膜で起こるように、傷口や粘膜などへの接触でも起こります。
食品では鶏卵、小麦、ソバ、甲殻類(エビやカニなど)、ピーナッツなどが原因として多く報告されています。
医薬品はすべてアナフィラキシーの原因になり得ますが、抗菌薬、解熱鎮痛剤などで比較的多く起こることが知られています。
昆虫ではハチに刺されて起こるアナフィラキシーが有名です。
ややまれですが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーという、特定の食品を食べた後に運動すると起こるアナフィラキシーもあります。
人体の警報システムが盛大に誤作動
人体には、侵入者が入ったときの警報システムが備わっていますが、この反応が必要以上に大きすぎると不都合が起こります。アナフィラキシーは、警報システムが盛大に誤作動して取り返しがつかない大騒動に発展してしまった状態といえます。とくに、IgEという物質が大量のヒスタミン放出を促し、血管の拡張や水分漏出を引き起こす反応がよく知られています。
異物との接触から発症が早いほど重症
アナフィラキシーは異物との接触直後に起こることが多く、発症までの時間が短いほど重症化しやすいとされています。そのため医療機関では、ワクチンや注射薬は投与から30分間を特に注意して観察します。
アナフィラキシーになると、 どうなるの?
じんましん+ABCD と覚えましょう。
じんま疹+(A〜Dのどれか)でアナフィラキシーかどうか判断しやすくなります。
原理としては、ヒスタミンの作用で全身の血管から水分が血管の外に漏れてしまうことによる症状が主です。
じんま疹:目や唇も腫れ、鼻水も出る
花粉症と同じことが急速に起こり、目や鼻で分泌物が増えます。目が赤くかゆみが出て、くしゃみや鼻づまりも起きます。
A 気道:ノドが腫れて息が詰まる
のどの粘膜が急速に腫れるため、喉がつまったように感じたり息が苦しく感じます。
B 呼吸:くしゃみがセキ、息が苦しい
咳や呼吸困難を感じるようになり、喘息の発作のようにゼイゼイします。
C 循環:立ちくらみ、動悸、顔面蒼白
血管の中から大量の水分が外に逃げ、同時に誤った警報が全身に広がるため、動悸が続いたり血圧が低下したりします。
D 下痢:下痢、腹痛、嘔吐
血管から水分が外に漏れることで腸の粘膜も腫れ、下痢や腹痛を起こします。
アナフィラキシー、 どう対応すれば良い?
アドレナリンを太ももに筋肉注射
アドレナリンはヒスタミンの放出を抑え、血管から水分の漏れを減らし、血圧を高める作用があります。つまり起こっていることの逆作用なので、アナフィラキシーに最適な治療薬なのです。
エピペンというカートリッジ式薬剤を携帯されている方もいますが、あの中には筋肉注射用のアドレナリンが入っています。
エピペンも医療用のアドレナリンも太ももに筋肉注射します。他の場所(肩や尻など)に打つと効果やスピードが落ちるとされているので、注意しましょう。
エピペンを打ったら救急車もセットで
エピペンは特効薬ですが、1度打っただけで治療は終わりません。誰かがエピペンを打ったら、必ず救急車を呼びましょう。
アナフィラキシーに対するアドレナリンは何度か投与する場合が多いうえ、血管から漏れて減った水分を点滴で補ったり、酸素投与したり、医師による治療や厳重な観察が不可欠だからです。
さらに、ある種の薬剤を服用しているとアドレナリンの効果が落ちる可能性があるため、繰り返し投与したり別の薬剤を併用する可能性も検討する必要があります。
アナフィラキシーは予防できますか?
いつ誰が起こすか、事前予測はできません
コロナウイルスワクチンの接種会場には、必ずアドレナリン注射ができる準備をしています。会場で接種後にじんま疹 または 上記A〜Dの症状が出たら、決してガマンせずにスタッフに申し出てください。自分以外に疑わしい人を見かけたら、遠慮せず誰かに声をかけましょう。アナフィラキシーは1分1秒を争う緊急事態です。
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