ワクチンと病気について
A型肝炎について
- 2021.04.07
A型肝炎とは
A型肝炎ウイルスが原因のウイルス性肝炎です。
水や食品を介して感染することが多く、日本では牡蠣などの海産物を食べて感染したり、海産物以外の食品でも年間500例ほど報告されており、ウイルス性肝炎の中ではB型肝炎に並んで多い感染症です。衛生状態の良い日本では大規模な流行がみられることはありませんが、海外旅行中に水や氷、生野菜や肉などの食品を介して感染することが多いため、諸外国では途上国などへの渡航前には A型肝炎ワクチンの接種が必要です。
感染経路 | 接触感染(糞口感染・性行為感染etc) |
潜伏期 | 2-7週間(平均4週間) |
周囲に感染させうる期間 | 発症前から発症後数週間 |
感染症法 | 4類感染症(全数報告:直ちに届出が必要) |
主な症状は
感染してから2-6週間は症状がなく(潜伏期)、その後、発熱、頭痛、倦怠感、筋痛などの全身症状と、食思不振や嘔吐などの消化器症状が始まります。典型的には黄疸、肝腫大、尿色変化などがみられます。血液検査では肝機能異常(AST/GOT,ALT/GPTの上昇)、通常1-2ヶ月で症状も検査所見も回復しますが、中には肝機能の正常化に半年近く要することもあります。
他のウイルス性肝炎と比べて、慢性化することはなく、症状や検査所見の改善が早いことが特徴ですが、高齢者や慢性の肝疾患がある場合などは劇症化し死亡するケースもあります。一度感染すれば、抗体を獲得し再度感染することはありません(終生免疫)。
乳幼児が感染しても軽症で済むことが多いです。感染する年代は高齢者が多く、その場合重症化しやすいので注意が必要です。
また、患者全体の1割が海外渡航者であり、特に中国やインド、東南アジアなどへの旅行の際はワクチン接種が推奨されます。
診断方法は
血液検査(血清HAV-IgM抗体)で確認します。発症5-10日前頃から陽性化し6か月近く検出されることがあります。回復期にIgG抗体が陽性となり、生涯陽性を維持します。
治療法は
抗ウイルス薬はなく、基本的には入院し安静にて支持的な対症療法を行います。
予防法は
ウイルスに感染した糞便が接触することで感染するため、手洗いや、汚染している可能性のある食品(野菜、氷、水、肉など)は避けるかしっかり流水で洗う、またはしっかり加熱するなどが大切です。アルコール消毒は無効です。その他、流行国へ渡航する際はA型肝炎ワクチンの接種が有効です(3回接種で100%の抗体獲得が期待できます)。
A型肝炎ワクチンについてはこちらを参照。
参考サイト
1)A型肝炎とは 国立感染症研究所
2)感染症についての情報 A型肝炎 FORTH 厚生労働省検疫所