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ワクチンと病気について

ワクチン情報

肺炎球菌ワクチン(23価)

  • 2023.05.13
  • 定期接種
  • 任意接種
  • 不活化ワクチン
  • 成人
  • 高齢者
  • 無脾・脾摘
  • 腎不全・透析
  • 糖尿病
  • 心不全・心筋梗塞
  • 肺疾患
  • アルコール中毒
  • たばこ・喫煙者

肺炎球菌(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライド)ワクチンについて

商品名:ニューモバックス®NP

予防できる病気

肺炎球菌感染症

ワクチンの種類

不活化ワクチン

定期/任意

定期接種:

これまでにこのワクチンを接種したことがなく、以下①②にあてはまる人は定期接種として1回接種できる

①2023年度末までに65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる人。

②60〜64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限されている人。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)で免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人。

任意接種:

2歳以上で肺炎球菌による重篤な疾患にかかるリスクが高い次のような人

・高齢者

・心臓、呼吸器、肝臓の慢性疾患、腎不全、糖尿病、慢性髄液漏、アルコール依存症などの基礎疾患のある人

・脾摘患者、脾機能不全(鎌状赤血球疾患やその他の原因)など免疫不全状態の人

・免疫抑制作用を有する治療が予定されている人で治療期間まで少なくとも14日以上の余裕がある人

接種回数

1回

接種量

1回0.5mlを筋肉内または皮下に注射する

接種間隔

5年以上の間隔をあけて接種可能(任意接種)

費用

定期接種:1回 0〜5000円(自治体により異なる)

 ※市民税非課税世帯や生活保護受給者は接種費用免除の場合がある

任意接種:1回 約7500〜9000円(施設により異なる)

 ※脾摘患者は保険適用

 

ワクチンの効果
 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)は、肺炎球菌の100種類の血清型のうち、23種類を含みます。

肺炎球菌感染症が重症化すると髄膜炎(ずいまくえん)や菌血症(きんけつしょう)などをひきおこし、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)と呼ばれます。このワクチンの一番の目的はIPDの予防です。

 国内の成人のIPD調査(2013年〜2017年)では、PPSV23接種による、PPSV23に含まれる血清型が原因のIPDの予防効果は42.2%でした(年代別では、20〜64歳で59%、65歳以上で39.2%)1)

また、国内の65歳以上を対象とした研究(2011年〜2014年)では、5年以内のPPSV23接種によって「すべての肺炎球菌による市中肺炎」を27.4%、「ワクチン血清型の肺炎球菌による市中肺炎」を33.5%予防したと報告されています2)

 PPSV23初回接種後の予防効果は3-5年で低下するとの報告もあり3)、わが国では初回接種後5年以上あければ2回目の接種(任意接種)をすることができます。
ただし、PPSV23の再接種(2回目以降)の実際のIPD予防効果についてはエビデンスがはっきりしておらず、さらなる報告が待たれます。

 

どんな人にお勧め?

・65歳以上の高齢者:2023年度までは、65歳から5歳毎に初回のみ定期接種の対象となります。(2024年度以降は、65歳になる年度に定期接種として1回接種できる見込み)

・脾臓を摘出した人:肺炎球菌による感染症の発症予防として保険適用されますが、より確実な予防のためには摘出の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましいです。

・脾機能不全(鎌状赤血球など)の人

・次の基礎疾患のある人:心臓や呼吸器、肝臓の慢性疾患、腎不全、糖尿病、慢性髄液漏、アルコール依存症など。ご本人と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種することを検討。

・免疫不全状態の人:ステロイド、抗がん剤、免疫抑制剤、生物学的製剤など治療中、固形がん、人工透析、自己免疫性疾患、血液幹細胞移植後など。ご本人と医師との話し合い(共有意思決定)に基づいてワクチン接種することを検討。

・免疫抑制作用がある治療が予定されている人:治療開始の14日以上前までに接種を済ませておくことが望ましいです。

 

接種スケジュール作成のポイント
 初回接種後、5年以上あければ2回目の接種をすることができますが、2回目以降の効果についてはエビデンスがはっきりしていません。

 

・ 高齢者や上記のハイリスク者に対する13価または15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13、プレベナー13®またはPCV15、バクニュバンス®)と23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23、ニューモバックス®)との連続接種について、日本呼吸器学会/日本感染症学会/日本ワクチン学会・合同委員会の「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版 2023-3-24)を公表しています。

PCV13/PCV15接種とPPSV23接種の間隔は、その安全性と両ワクチンに共通する血清型特異抗体のブースター効果が確認されている1-4年以内に接種することが推奨されています。

 上記の「考え方」では、PPSV23未接種者とPPSV既接種者に分けて指針を示しています。

 PPSV23未接種者に対して:①まず定期接種としてPPSV23を接種を受けられるようにスケジュールを行い、②PPSV23とPCV13またはPCV15の両方の接種をする場合には①を勘案しつつPCV13/PVC15→PPSV23の順番で接種し、PCV13/PCV15接種後1年-4年以内にPPSV23を接種することが適切と考えられています。

 

PPSV既接種者に対して:PPSV接種後、1年以上の間隔をおいてPCV13/PCV15を接種することも考えられます。PCV13/PCV15接種後にPPSV23の再接種をする場合には1年-4年以内が適切と考えられています(PPSV23どうしの再接種間隔は5年以上が必要)。

最終的には、ご本人と医師の話し合い(共有意思決定)にもとづいてスケジュールと決定することが大切です。


詳細は「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版 2023-3-24)」をご参照ください。

 

ワクチンの副反応
 ワクチン接種による一般的な副反応以外に、肺炎球菌ワクチンに特異的な副反応報告はありません。

 皮膚浅くに接種すると、接種後に皮膚のびらんや潰瘍が生じる報告がありますので、深めの皮下接種または筋肉内注射を推奨します。

 

ワクチンの禁忌
 2歳未満の人は禁忌です。そのほか、PPSV23による強いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがある場合以外に禁忌はありません。



参考文献・サイト

1) Shimbashi R, et al. Effectiveness of 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine against invasive pneumococcal diseases in adults, Japan, 2013-2017. Emerg Infect Dis 2020;26:2378-86.

2) Suzuki M, et al. Serotype-specific effectiveness of 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumococcal pneumonia in adults aged 65 years or older: a multicenter, prospective, test-negative design study. Lancet Infect Dis. 2017;17:313-21.

 

3)23価肺炎球菌多糖体ワクチン:WHOポジションペーパー.  世界保健機関(WHO).2008年(英語、仏語)

 

肺炎球菌ワクチン:WHOポジションペーパー. 世界保健機関(WHO).

 2012年(英語、仏語)


肺炎球菌ワクチン. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA).