ワクチンのおはなし
予防接種後の健康被害に対する救済制度について
- 2020.03.23
予防接種後の健康被害に対する救済制度について
ワクチンの予防接種は、わたしたちや社会を感染症から守るために大切な予防的な方法です。しかし、ほかの医薬品や食品などと同じ様に副作用が起こるリスクはゼロではなく、とてもまれですが健康に被害をおよぼすことがあります。そのため、予防接種によって健康被害を受けた方に対して公的な救済制度が設けられています。
救済制度は、定期接種、任意接種によって制度が異なりますが、どちらの場合も健康被害を受けた本人や家族による申し出が必要です。その際に医師は診断書や証明書の作成に協力します。
ある原因があって、ある出来事がおこったとき(結果)、その原因と結果の関係を因果関係(いんがかんけい)といいます。ワクチン接種と健康被害との間に因果関係が認められた場合、つまりワクチン接種が原因で健康被害がおきたと認められた場合に救済給付が実施されます。給付の種類には、①医療機関での治療に要した医療費や医療手当(医療を受けるために要した諸費用)②障害が残った場合の障害児養育年金または障害年金③死亡時の葬祭料および一時金、遺族年金がありますが、各制度によって給付額は異なります。
なお、国内未承認ワクチン(いわゆる輸入ワクチン)に対しては、輸入業者が独自の補償制度を設定している場合もありますが、これらの公的な制度は適応されないことにも注意してください。
副作用・副反応については、こちらもご参照ください。
1) 定期接種の場合:予防接種健康被害救済制度
予防接種健康被害救済制度は、予防接種法に基づく定期の予防接種(定期接種)により健康被害を受けた方を救済するための公的な制度です。申請窓口はお住まいの市町村になります。
定期接種を受けた方に健康被害が生じた場合、対象となる予防接種と健康被害との因果関係があるかどうかを疾病・障害認定審査会で個別に審査し、因果関係が認定された場合に健康被害に対して給付が行われます。
2) 任意接種の場合:医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度
医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(PMDA法)に基づく公的な制度です。
これらの制度は、医薬品等を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による入院が必要な程度の疾病や日常生活が著しく制限される程度の障害などの健康被害を受けた方に対して、医療費等の給付を行い、被害を受けた方の迅速な救済をはかることを目的としています。どちらの制度が適用されるかは健康被害の内容や原因によって異なりますが、申請窓口はいずれもPMDA(相談窓口の電話番号:0120-149-931)になります。
表:予防接種後の健康被害救済制度の違い
| 定期接種の場合 | 任意接種の場合 |
制度名と 法律 | 予防接種健康被害救済制度 (予防接種法) | 医薬品副作用被害救済制度または 生物由来製品感染等被害救済制度 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構法) |
給付の請求者 | 本人または家族 | 本人または家族 |
申請窓口 | 市町村 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 電話番号:0120-149-931 |
給付額 (死亡時) | A類疾病 B類疾病 | 約733万円※(遺族一時金) |
※2019年4月1日時点4)
<参考資料>
以下の資料もご活用ください。
・日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」 予防接種の副反応と有害事象.
・副反応疑い報告制度と救済制度制度の詳細は、厚生労働省のWebサイト2), 7)やPMDAのWebサイト8)および予防接種必携5)をご参照ください。
<参考文献>
1) 予防接種後の有害事象. 予防接種基礎講座(2017年3月開催資料). 厚生労働省.
3)予防接種法に基づく副反応疑い報告(医療従事者向け). 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).
4) 予防接種後副反応疑い報告書(別紙様式1). 厚生労働省.
5) 予防接種実施者のための予防接種必携 令和元年度(2019). 公益財団法人予防接種リサーチセンター.
6)「予防接種後副反応疑い報告書」入力アプリ. 国立感染症研究所.
8) 医薬品副作用被害救済制度. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).
9) 日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」 予防接種の副反応と有害事象. 日本小児科学会.
10) 藤岡雅司, 田原卓宏(編):予防接種マネジメント, 中山書店, 東京, 2013.
11) 中山久仁子編集. おとなのワクチン. 南山堂, 東京 , 2019.