ワクチンと病気について
病気(VPD)について
ダニ媒介脳炎について
- 2021-04-07
ダニ媒介脳炎 Tick-borne Encephalitis (TBE) とは
ダニ媒介性脳炎は、マダニ科に属する各種のマダニ(Ixodes ricinusやI.persulcatus)によって媒介されるフラビウイルス感染症で、ヒトに急性脳炎をおこします。ダニ媒介性脳炎ウイルス群は14 のウイルス種からなりますが、このうち8 種類がヒトに病気をおこします。ヨーロッパ亜型、シベリア亜型、極東亜型の3亜型に分類されます。
世界では、ダニ媒介脳炎は、毎年1万から1万5千人の報告があります。中央ヨーロッパ、東ヨーロッパの多くの国々およびロシア、中国で流行しています。
日本では極東亜型のウイルスが分布しています。国内では、1993年に北海道で初めて患者1名が報告され、2016年に1例、2017年に2例、2018年に1例、2024年に2例の発生が報告されています。(2024年7月16日現在)2)。
感染経路 | ダニに刺咬されることで感染するマダニによって媒介される (感染した山羊や羊等の未殺菌の乳を飲んで感染することもある) |
潜伏期 | 7-14日(2‐28日) |
周囲に感染させうる期間 | 人から人に感染することはありません |
感染症法 | 第4類感染症(直ちに届出が必要) |
主な症状は
TBEウイルスに感染しても、70-98%は症状がありません(不顕性感染)。
ヨーロッパ亜型
病状は二相性を呈することがあります。第一期は、インフルエンザ様の発熱、頭痛、眼窩痛、全身の関節痛や筋肉痛が2~4日間あり、解熱後2-3 日間は症状が消え、その後、約3分の1は、髄膜脳炎に進展し(第二期)痙攣・眩暈・知覚異常などの中枢神経系症状が起こります。死亡率は1-2%。10-20%に後遺症として神経学的後遺症(感覚障害、平衡感覚障害、感音性難聴など)をきたすことがあります。
極東亜型
病状は一相性です。潜伏期の後に徐々に発症し、頭痛・発熱・悪心・嘔吐の髄膜炎症状が見られ、脳脊髄炎を発症すると精神錯乱・昏睡(こんすい)・痙攣および麻痺(まひ)などの中枢神経症状がでます。極東亜型のウイルスは、最も重篤な経過をたどり、致死率は20%-40%、生残者の30-40%に神経学的後遺症が残ります。
シベリア亜型
急性期の症状は穏やかで、脳炎を呈してもその多くは麻痺がありません。致死率は6-8%です。しかし、進行性の慢性ダニ媒介脳炎との関連が示唆されています。進行性慢性ダニ媒介脳炎の症状は、てんかん、肩神経叢の進行性神経炎、パーキンソン病様症状、進行性筋萎縮症が含まれます。潜伏期間は長い場合1年を超え、発症した場合は進行性の慢性経過をたどり、死に至った方もいます。この進行性慢性ダニ媒介脳炎は、シベリアおよびロシア極東地域の感染者の1-3%に認められます。
診断方法は
血液、髄液、尿からのダニ媒介脳炎ウイルスの分離・同定、ウイルス遺伝子の検出、ダニ媒介脳炎ウイルス特異的抗体の検出をすることで診断します。血液、髄液におけるダニ媒介脳炎ウイルス特異的IgM抗体の検出、あるいは、ペア血清を用いた中和試験による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇により確認します。(抗体検査においては、日本脳炎の影響も考慮する必要があります。)
国内では、保健所を通じて国立感染症研究所に検査を依頼することができます。検査依頼の際には、流行地等への訪問・居住歴、日本脳炎の予防接種歴に関する情報も併せて提供してください。
治療法は
特異的な治療方法はありません。
予防法は
マダニに咬まれないようにすること
1.民家の裏山や裏庭、畑やあぜ道、沢に沿った斜面や森林の笹原、牧草地などの野生動物が出没する環境に入る場合には、身を守る服装をしましょう。
・首にはタオルまたはハイネックのシャツ
・長袖、長ズボンを着用:シャツの裾はズボンの中、シャツの袖口は軍手の中、ズボンの裾は靴下の中に入れましょう。
2.野外活動後は上着を家の中に持ち込まないようにします。もしダニが服についていたら、ガムテープで取り除くことができます。外出後は入浴し、マダニに刺されていないか確認しましょう。
3.忌避剤(虫よけ剤)を使用しましょう。ダニに有効な成分は、ディートまたはイカリジンです。
ワクチン接種
流行地でダニに咬まれる可能性がある行動をする場合、長期滞在や流行地に居住している場合は、ダニ媒介脳炎ワクチンでの予防を推奨します。
ダニ媒介脳炎ワクチンについてはこちらを参照。
参考サイト
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